「ダブル」というのは、刑事裁判関連の俗語になります。
被告人、捜査担当の警察官や刑務官がよく使う言葉になります。
当職は、話を合わせるために使うことはありますが、
自分から、ダブル云々ということは、ありません。
意味としては、
「執行猶予中の被告人が、再度、執行猶予付の判決をもらえること」
になります。
ここので、執行猶予は、全部猶予を指し、一部猶予の場合は、
含まれません。
2件の執行猶予付の判決を貰うことで、二重に執行猶予中になることから、
「ダブル」と表現されるようです。
意味としては、1つですが、
パターンとしては、次の2つがあります。
①執行猶予中に別の罪を犯して、その罪についても、執行猶予をもらう
こちらのパターンが、本来の意味のダブルになります。
このパターンの場合には、再度の猶予について規定する刑法25条2項の
要件を満たす場合にのみ、執行猶予が付されます。
1回目の判決が、保護観察付の猶予判決だった場合には、
このパターンでのダブルは、条文上あり得ません。
②1回目の執行猶予判決が確定する前に犯した罪について、
1回目の猶予判決が確定した後(すなわち猶予中)に、
その罪についても、猶予判決をもらう
②のパターンは、最初の判決確定前の余罪について、執行猶予をもらうパターンになります。
こちらのパターンの場合には、再度の猶予の規定である刑法25条2項ではなく、
初度の猶予等について規定した刑法25条1項が適用されることになります。
条文上の要件としては、緩いということになります。
(しかしながら、①のパターンよりも猶予がもらいやすいとは、必ずしも言えません。)
こちらのパターンの場合には、1件目の判決が、
保護観察付の執行猶予判決であっても、ダブルの可能性があります。
②のパターンが重なると、理屈の上では、「トリプル」や「クアドラプル」もあり得ます。
例えば、
罪A
↓
罪B
↓
罪C
↓
罪Cのみ、発覚
罪Cについて、全部猶予判決確定
↓
罪Cの猶予中に、罪A発覚
罪Aにつき、全部猶予判決確定
↓
罪C、罪Aの両方で猶予中に、罪B発覚
罪Bにつき、全部猶予判決
などが、トリプルの例として考えられます。
予想外に再度の執行猶予がもらえた場合に、
被告人に、次のような声掛けがされる場合があります。
おい、お前、良かったな。
普通、ダブルとか、ねえぞ。