弁護人選任届の提出先について 刑事弁護人だより

弁護人選任届の提出先について

「刑事弁護 用語解説」のカテゴリーに、弁護人選任届に関する記事がありますので、

参考までに、弁護人選任届の提出先について紹介させていただきます。

1 まず、最初に、弁護人選任届を作成、提出する必要があるかどうかを確認します。

(1)私選弁護人として活動を行うためには、弁護人選任届の提出が必要です。この場合

  の私選弁護人は、純粋に自費で雇われる弁護人も、被疑者援助を受けて活動する場合

  でも、同じように扱われます。

(2)一方、国選弁護人として、弁護活動を行う場合には、選任自体を裁判所が行いますので、

  別途、弁護人選任届を作成、提出する必要はありません。裁判所から検察庁に対して、

  国選弁護人が選任された旨の通知が行われますので、弁護人から、検察庁に選任の通知を

  する必要もありません。

2 弁護人選任届の提出が必要な場合の届出先は、下記の(1)から(3)のとおりです。

(1)事件が検察庁に送致される前の場合

 検察庁送致前の事件に関する弁護人選任届の提出先は、刑事訴訟規則上は、

「事件を取り扱う司法警察員」ということになっています。

分かりやすく言うと、当該事件を直接担当している警察官(要は、「担当の刑事さん」のこと。)

に提出しなさいということです。

留置先の警察署ではなく、実際に事件を取り扱っている警察署の担当刑事に提出します。

この段階で検察庁に弁護人選任届を持ち込んでも、事件自体が検察庁に把握されておりませんので、

当然、受付はしてもらえません。

ただ、送致前の段階で弁護人選任届を受け付けるということについて、担当刑事が不慣れという場合も、

多々あります。

その場合には、以下のようなやり取りがなされますが、最終的に、弁護人選任届は、必ず、

受領してもらいます。

弁護人
弁護人

明日、新件の〇〇さんの件、弁護人選任届の受付をお願いします。

控えを用意してあるので、受判(うけばん)もお願いします。

担当刑事
担当刑事

えっ、初めてのケースでよく分からないので、

検察庁に持って行ってもらえませんか。

弁護人
弁護人

送致前なので、検察庁じゃなくて、

事件を担当する警察署が提出先に

なるんですよ。

*正確には、警察署ではなく、事件を取り扱う司法警察員

担当刑事
担当刑事

そうなんですね。

では、受付させていただきます。

原本と控えに受判を押しておけば

いいですね。

弁護人
弁護人

はい、お願いします。

担当刑事
担当刑事

では、控えの方、お渡しします。

原本は、署の方で保管しておけば

いいですね。

弁護人
弁護人

いえ、原本は、送致書類と一緒に検察庁に送って下さい。

警察署では、写しを保管しておいて下さい。

担当刑事
担当刑事

えっ、でも、もう送致書類一式、

組んでしまったのですが。

弁護人
弁護人

目録を直すかどうかは、お任せしますけど、

必ず、送致書類に含めて、明日、送って下さい。

担当刑事
担当刑事

分かりました。

(2)事件が検察庁に送致された後だが、まだ起訴されていない場合

事件が検察庁に送られた後だが、起訴される前という段階での弁護人選任届の提出先は、

刑事訴訟規則上は、「事件を取り扱う検察官」になります。

実際には、事件を取り扱う検察庁の担当窓口に提出するということになります。

区検察庁が取り扱う事件であれば、区検察庁に、

地方検察庁が取り扱う事件であれば、地方検察庁に提出する必要があります。

基本的に事件は、管轄内の地検に送致されますが、まれに区検察庁に送致される場合が

ありますので、提出先(=送致先)は、事前に確認しておく必要があります。

(どこの検察庁に送致されるかは、留置係等で事前に確認することもできます。)

(3)起訴後の場合

起訴後の事件における弁護人選任届の提出先は、受訴裁判所になります。

要するに、実際に事件を担当する裁判所のこと、になります。

裁判所によって扱いが異なる場合がありますが、基本的には、

審理を担当する部に、選任届を直接提出するという方法で、

弁護人を選任した旨の届出を行うことになります。